■遺言書の内容を実現したい
父が自分で書いた遺言書を残して死亡しました。遺言書には「すべての財産を長男に相続させる」と書いてあります。相続人は母、長男、次男の3人です。遺言書の内容どおりに相続したいのですが、気を付けることはありますか?
最初に遺言書が有効かどうかという問題があります。
自筆証書遺言の場合、遺言者が遺言書の全文、日付、名前を自書して、これに押印をしていれば、基本的には有効です。
次に注意しなければならないのは、遺留分です。遺留分とは、簡単にいうと兄弟姉妹、おい、めい以外の相続人が、最低限保証されている取り分のことをいいます。
今回の遺言書の内容だと、母と次男は全く相続財産を貰えません。そこで、自分も相続財産を貰いたいと主張できる権利があり、この権利を遺留分侵害額請求権といいます。今回の事例の場合、遺留分は法定相続分の2分の1の割合ですので、具体的には、母は4分の1、次男は8分の1の割合で遺留分を主張できることになります。主張された場合、長男は遺留分を原則として金銭で渡さなければなりません。
ここで問題になるのが、相続財産の内容です。仮に相続財産が預金だけでその金額が800万円だとした場合、母に200万円、次男に100万円を渡せばいいことになります。しかし、相続財産が不動産のみ、しかもその不動産が、長男が住んでいる自宅のみという場合はどうでしょう。自宅を売却して金銭を渡すこともできますが、自宅がなくなってしまいます。遺言書の内容を実現するためには、長男が母と次男に問題なく遺留分を金銭で支払うことができるか考えなくてはなりません。
このように、たとえ遺言書があっても、そのとおりに相続することが困難な場合もあります。遺言書で相続財産を貰うことになった相続人は遺言書どおり相続を進める前に、問題点はないか、遺留分を主張する相続人がいた場合はどうするのか等を考えてから手続きをしましょう。
詳しくは埼玉司法書士会までお問合せください(☎048・863・7861)。
(司法書士 髙橋孝雄)
埼玉新聞 令和8年1月8日から転載





