埼玉司法書士会

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■自然災害と賠償責任~台風など自然災害への備え~

 年々、台風が強さを増し、季節外れの台風も猛威を振るっていますが、台風の影響により私の自宅から物が飛散したことで他人にけがをさせてしまった場合、全て責任を負わなければならないでしょうか?

 まず、日本の法律では、他人に迷惑をかける行為(違法行為)により、他人に損害が発生した場合には、原則として迷惑をかけた人はその損害について責任(賠償義務)を負う必要があります。具体的には、違法行為によって他人の物を破損させてしまった場合にはその修理費用を、他人をけがさせてしまった場合には治療費や病院までの交通費等を負担しなければなりません。

 もっとも、その行為に故意(わざとすること)または過失(落ち度・不注意)がなければ法律上の責任はないとされています(過失責任主義)。交通事故を起こした人が責任を負うのは、前方不注意などの過失が認められるからです。

 その一方で、土地の工作物(例えば、建物や塀、看板など)については、建物や塀などが倒壊し他人に損害を与えた場合には、その所有者は故意や過失がなくても建物や塀に瑕疵(通常の安全性を欠く状態)があると認められると、損害を賠償する責任が生じます。例えば、家のブロック塀が崩れて他人にけがをさせたケースでは、台風や地震が直接の原因であったとしても、元々ブロック塀が経年劣化等で今にも崩れそうな状態(瑕疵が認められる状態)であったとすれば、所有者は責任を負わなければなりません。

 また、複数回の地震により建物等の工作物に重大な損傷が確認できていたにもかかわらず、改修工事等をしないまま長期間放置し、次の地震で倒壊したなどの事情がある場合にも、責任を問われる可能性があります。

 以上のことから、毎年必ずどこかで台風などの被害が報告されることを考えますと、台風の季節が来る前や地震などの自然災害に備え、定期的にご自身が所有している建物(賃貸物件も含まれます)や塀、屋根などの状態を確認し、異常が確認された時には放置せず、すぐに修繕などの措置を講ずるよう心がけていただければと思います。

 詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 染谷浩介)

埼玉新聞 令和7年11月6日から転載

 

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