■経営者のための相続・遺言(Vol.9)~商業登記申請書に利用する印鑑とそれ以外の印鑑について~
会社経営者において利用する印鑑のことを一般的には社判(しゃばん)と言います。これは、大きく分けて、実印と認印に二分されます。
実印とは、通常法務局に届出をしている印鑑のことで、最も大事な印鑑です。印鑑の届出をすると「印鑑カード」が発行され、これを法務局に持参すれば印鑑証明書を発行してもらえます。委任状がなくても印鑑カードがあれば誰に対してでも印鑑証明書は発行されるので、実印と印鑑カードは分けて保管しないと危険です。
ところで、実印は、丸印とか代表者印と呼ばれることが多いです。これは実印を作る場合に円形の印にして、○○会社代表取締役印と記載されるのが一般的だからです。許可申請書などの公的機関に提出する書類には、この実印を求められることがほとんどであり、役所の窓口などで「申請書は代表者印でお願いします」と言われたら、この実印のことだと思ってください。もちろん、商業登記の申請書においても、この実印は必要です。よって、会社設立の登記を申請するには、実印の届出もする必要があります。
ただし、令和3年の商業登記規則改正によって、オンラインによる商業登記の申請をする場合に限り、実印の届出が任意となりました。実印の届出をしない場合は、実印に代わって「商業登記電子証明書」というものを取得しなければなりません。つまり、実印の代替物として電子データの証明書を利用するというものです。「脱ハンコ政策」推進の立場から、法務局に限らず多くの官公署でオンライン申請が利用できる体制は整いつつあります。しかし、この電子証明書は所持しているだけでも維持管理費用がかかるなどの問題があります。しかも、実印は登記申請などの官公署手続のみに利用するものではありません。たとえば金融機関の手続や重要な商取引においては、まだまだ書面による契約書などに実印の押印と印鑑証明書のセットを求められることが主流です。よって、少なくとも現時点においては、電子証明書を取得した場合であっても、実印を準備し、印鑑の届出をされることをお勧めいたします。
さて、この実印以外の社判のことを認印といいます。その代表が角印と呼ばれている会社の印鑑です。領収書や請求書などは、この角印を用いることが多いと思います。この認印で大事なことは、「通常利用している印鑑」という考え方です。「通常利用している印鑑」を押印している書類は、その名義人が自分で押印した書類と推定される結果、その書類そのものが正しく作成された書類と推定されてしまうというものです。そのため、認印であっても、悪用されることがない様に、いつ、誰が、どの書類に押印したのかを記録して管理することが大事です。
(司法書士 綾賢一)
※越谷商工会議所会報「鼓動」 令和8年1月1日から転載





