■遺言書はつくらなきゃダメですか??
うちは妻と子供の3人家族ですが、家族仲が良いのが自慢。だから、遺言書なんてつくらなくてもいいと思うんです。私名義の古い家と多少の預金がありますが、わざわざ遺言書をつくる必要なんてあるんですか?
「遺言書をつくる」と聞くと、「あら、あそこの家は仲が悪いから大変ね」と想像される方、いらっしゃると思います。確かに、ご家族が仲良しであれば遺言書をつくる必要はないと思われるのも当然です。しかし、遺言書に奥さまやお子さま方への具体的な相続財産を指定することによって、相続が発生した時に起こり得る紛争を防ぐことができます。また、現代は超高齢社会。認知症になる高齢者の数は年々増えているという話はご存じかと思います。
さてここで、例えば、奥さまが認知症になってしまったとしましょう。この状態で相続が起こり、遺言書をつくっていなかったなら、どういう状況になるでしょうか。
①遺言書がなければ、遺産分割の話し合いをして誰がどの相続財産を取得するかを決めていくことになりますが、法律上、認知症の方は話し合いに参加できません。どうしても話し合いで分割したいのであれば、家庭裁判所に申立てをして奥さまの成年後見人を選任してもらう必要がでてきます。
②成年後見制度を使うのが嫌だということであれば、相続財産は法定の相続割合で分割されることになります。つまり、不動産は奥さまとお子さまの共有にならざるを得ません。そして、認知症の方が不動産の持ち分を持っている状態では、通常、不動産の売却は困難です。
今は、不動産を売却する予定などないかもしれませんが、奥さまが認知症であれば施設に入ることもあるでしょうし、成人したお子さまはご実家をお出になる可能性もあるでしょう。そうすると、ご実家は空き家になり毎年税金がかかるだけ・・・という状態にもなりかねません。
こんな状況を防ぐための方法として家族信託などもありますが、一番簡単な方法は遺言書をつくることです。自筆証書遺言であれば費用もかからないですし、とりあえず今現在の状況をみてつくっておき、気が変わればまた書き直したっていいのです。
「遺言書があれば良かったのに・・・」というケースはかなり多い印象です。残されるご家族のためにも、ぜひ遺言書をつくってみてくださいね。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎ 048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 柏原昌之)
埼玉新聞 令和3年10月7日から転載