
■遺書(いしょ)と遺言書(ゆいごんしょ、いごんしょ)

遺書と遺言書は同じでしょうか?私は書いておいた方が良いのでしょうか?

遺書と遺言書とでは、字面から受ける印象からすると、両者は同じようなものと思われるかも知れませんが、両者は全くの別物だといえます。遺書は、自分が亡くなった時に残したいメッセージのようなものです。家族や友人などお世話になった人への感謝をつづったり、もしかしたら恨み事や秘密の暴露かも知れません。このように、遺書は手紙のようなものなので、原則的には法的な効果はありません。
一方、遺言書は、自分が亡くなった後に自分の財産をどのように分配するかをあらかじめ決めておくことを目的に作成する文書です。遺言書がない場合は、亡くなった人の相続人全員で話し合いをして、遺産の分け方を決めます。この話し合いのことを遺産分割協議といいますが、相続人全員の意見が一致しないと成立しません。
遺言書を書くべきかどうかは、人それぞれと言えます。例えば、相続人が1名のみで、その1名に全財産を引き継がせる場合は遺言書を書く必要性は低いといえます。配偶者がすでに亡くなっており、その夫婦の子どもが一人っ子の場合は、遺言書を書かなくてもその子どもが全財産を引き継ぐことができます。逆に、その子ども以外の人にも財産を分けたい場合は遺言書を書く必要があります。
遺言書を書いておくべき典型例は、子どもがいない夫婦です。例えば、子どものいない夫婦の夫が亡くなったとします。この場合の相続人は妻と夫の両親です。妻は、亡くなった夫の遺産について夫の両親と話し合いをしなければなりません。ただし、多くの場合では夫の両親は夫より先に亡くなっています。その場合は、夫の兄弟姉妹(兄弟姉妹が夫より先に亡くなっている場合は夫のおい・めい)と話し合いをする必要があります。しかし、残された妻は、その状況をできれば避けたいと考えるのが一般的ではないでしょうか。そのような状況を避けるために、自分が亡くなったら妻(または夫)が財産をスムーズに引き継げるようにお互いに遺言書を書いておくことをお勧めします。
遺言書の種類は、公証人に作成してもらう公正証書遺言と自分で書く自筆証書遺言の主に2種類です。自筆証書遺言の場合は、法律の規定に則って書かないと無効になってしまいます。また、書いた内容が明確でないと、遺言書の解釈を巡って相続人間で争いになることもあります。せっかく遺言書を書いたのにそれでは残念です。
遺言書についてのご相談がありましたら、お近くの司法書士事務所または埼玉司法書士会(電話048・863・7861)にお尋ねください。
埼玉新聞 令和7年1月9日から転載
(司法書士 上松隆行)