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■「経営者のための会社法務」~株主名簿を整備しましょう~Vol.2

1 株主名簿を整備しよう

 株式会社には、出資者である株主に関して株主の氏名又は名称及び住所、各株主が有する株式の数、議決権等の情報が掲載された株主名簿を備置しておくことが必要です。株主総会議事録には株主の員数を記載しなくてはいけませんし、最近では、株主総会決議を伴う登記事項の変更申請の際には、一定の議決権割合又は員数までの株主の情報を記載した「株主リスト」の提出が求められます。会社が株主の情報を把握しておくためにも、株主名簿の整備は不可欠となっています。

 また、令和4年1月31日から、登記官が株式会社からの申出により、その実質的支配者に関する情報を記載した書面を保管し、その写しを交付する制度が開始されます。申出の際には株主名簿の写しを添付することになるため、株主名簿を利用する場面が今後、増えてくるでしょう。

 

2 退任した役員、退職した従業員が株式を保有している場合は注意!

 株主名簿には、株主の情報が記載されますから、誰がどれだけの議決権を有しているのか一目瞭然です。経営者や、将来その会社の経営を承継する予定の後継者以外の方が株式を保有している場合には、買取等の検討が必要かもしれません。例えば、退任した役員や退職した従業員が株式を保有している場合です。退任した役員や退職した従業員に相続が発生した場合、会社に友好的でない相続人が相続する場合も考えられます。また、取引先が株式を保有していて、取引先との関係が悪化した場合には、会社の運営に支障をきたしかねません。まずは、株主の状況を把握するためにも「株主名簿」を整備し、管理をすることが大切です。

 

3 名義株は解消しよう!

 平成2年の商法改正以前は、会社を設立する際、7名以上の発起人(当初株主)が必要でした。親族や従業員等から名義を借用して発起人とする名義株の場合もあったようです。名義株を解消しないまま現在に至っている会社も存在し、現在では、名義株主と連絡がつかない場合もあります。名義株については、判例では、実際に出資した者を株主であるとしています。しかし、古い会社ですと、実際に誰が出資したか判然としない場合もあります。名義株を解消する場合には、経緯等を確認の上、名義株主と交渉し、場合によっては、株式を買取る等の対応が必要となることもあります。まずは、株主名簿を整備し、名義株主がいないか確認することが必要です。

 

4 株主の所在が不明な場合は?

 株主が転居等をして、その所在が分からない場合や、株主に相続が発生したにもかかわらず、株式の存在を把握しておらず、株主名簿の書換えが行われない等の場合には、所在不明株主となります。所在不明株主を解消するためには、株主名簿上の住所に5年以上継続して通知が届かない等の一定の要件を充足することが必要となります。要件を充足した場合には、競売または裁判所の許可を得て任意売却をし、その代金を不明株主に交付することにより、所在不明株主の解消が可能となります。

 株主名簿の整備や名義株等への対応については司法書士等の専門家に相談することをお勧めします。

 

(司法書士 吉田 健)

 

※越谷商工会議所会報「鼓動」 令和3年11月1日から転載

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