埼玉司法書士会

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会長声明

■生活扶助基準の改定の見直しを求める会長声明

掲載日:2018.04.02

1 当会では、平成20年から「多重債務者等救済支援事業」として、生活保護申請の同行支援を行う会員を助成している。
厚生労働省は、社会保障審議会生活保護基準部会の昨年12月14日付報告書を受け、本年10月から3年かけて生活扶助基準を最大5%引き下げる方針を示した。そして、その引き下げを盛り込む予算案を閣議決定した。
しかしながら、同行支援をした生活保護の利用者等からは、「生活保護を利用できても、その基準自体が引き下げられると、生活自体が成り立っていかない。これ以上何を切り詰めればいいのか」という不安の声が多数聞かれ、憲法第25条が保障する「健康で文化的な生活」を維持することができるか疑わしく、生活保護制度の原則に立ち返って生活扶助基準の決定方法の見直しをする必要があると考える。

2 今回の引下げは、第1・十分位(所得階層を10に分けた下位10%の階層)という所得階層の消費水準に合わせるという水準均衡方式によっている。
生活保護の捕捉率(生活保護基準未満の世帯のうち実際に生活保護を受けている世帯が占める割合)は2~3割程度といわれ、この第1・十分位層の中には生活扶助基準を下回る生活を余儀なくされている人が多く存在するため、その消費水準と生活扶助基準を比較すれば、生活扶助基準の方が高くなるのは自明である。このような方法で生活扶助基準を定めるならば、法律が保障する「健康で文化的な生活を維持をすることができる最低限度の生活」=セーフティネットとしての機能を失い、その限界を超えて下降し続ける「引下げスパイラル」に陥る危険が高まる(前掲報告書でも、現行の水準均衡方式について、一般世帯の消費水準が低下すると、それにあわせて変動する方式であり、それに伴い基準の低下が起こりうること、及び、一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると比較する消費水準が低下すると絶対的な基準を割ってしまう懸念があることからも、これ以上、下回ってはならないという水準の設定について考える必要があると指摘し、最低限度の生活を送るために必要な水準とは何か、本質的な議論を行った上で、単に消費の実態に合わせるとの考え方によらず、理論的根拠に基づいた検証方法を開発することが求められるとし、MIS手法を用いて試行的に生活扶助相当支出額を算出したところ、水準均衡方式による分析結果から導き出される生活扶助相当支出額を大きく上回る結果となったことを挙げ、検証手法によって最低生活費は変わり得ることを示唆している。)。
厚生労働省の本来の役割は、国民生活の保障及び向上を図り、また経済の発展に寄与するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進を図ることにあり、これら最低賃金や就学援助等の施策と連動して低所得者層の所得を引き上げることや生活保護の受給要件に該当するすべての人が無差別平等に生活保護を受けられるよう、生活保護の補足率を高めて一般低所得世帯と生活保護世帯間の格差を無くす、ナショナル・ミニマム(国民生活の最低基準)を改善する施策を行う責務がある。

3 よって、このような生活保護の利用者の現状を無視する厚生労働省の生活扶助基準の引き下げの決定については、生活扶助基準の定め方を含め、その見直しを強く求める。

 

埼玉司法書士会 会長 山 嵜 秀 美

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