埼玉司法書士会

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会長声明

■民事裁判手続のIT化に関する会長声明

掲載日:2021.03.12

令和3年2月19日、「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」が公表された。この中間試案は、「民事訴訟制度をより一層、適正かつ迅速なものとし、国民に利用しやすくするという観点から、訴状等のオンライン提出、訴訟記録の電子化、情報通信技術を活用した口頭弁論期日の実現など民事訴訟制度の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい」との法務大臣の諮問を受けた法務省法制審議会(民事訴訟法(IT化関係)部会)での議論を取りまとめたものである。

当会は、適正かつ迅速な裁判実現のために手続のIT化を推進し、民事訴訟制度を見直しすることについて基本的に賛同するとともに、IT化によって国民の司法アクセスが後退することがないよう取り組む意思をここに表明するものである。

司法書士は、当事者から依頼を受けて裁判書類の作成業務を行い、また、平成14年の司法書士法改正後は簡易裁判所における訴訟代理人として、国民の権利の実現に寄与してきた。他方、IT化が先行した不動産登記・商業法人登記等の申請手続において、回線障害への対応やPDFファイルの取扱い等オンライン手続特有の事情にも対応してきた実績がある。

これらの経験を踏まえ、当会では、IT手続や機器の操作等に習熟していない者の訴状、準備書面、証拠等の送信(オンライン申立)や通知アドレスの登録先届出など、本人訴訟のIT面でのサポートにも取り組む用意があることを指摘しておきたい。

民事司法制度改革の推進の基本的考え方(令和2年3月10日民事司法制度改革推進に関する関係省庁連絡会議)では、「国民の司法アクセスを確保することに配慮しつつ、全面オンライン化の実現を目指すこととし、その過程において、弁護士等の士業者に限りオンライン申立てを義務化することを実現することとして、民事訴訟法等の必要な法改正に向けた検討を進める。」「民事裁判手続の利用者にとって使いやすいシステムを構築し、利用者の声を踏まえた不断の改善をすることが期待されることはもとより、適切な担い手による充実したサポート態勢を構築することが重要である。」としている。

この考え方の根底には、憲法上の諸原則(国民の裁判を受ける権利(第32条)及び裁判の公開(第82条))の要請があることは当然であろう。

中間試案のたたき台では、オンライン申立てに関して3つの案(甲案、乙案及び丙案)が示された。甲案はオンライン申立を原則義務化し、やむを得ない事情があると認めるときに例外的に書面申立を許容する。これに対し、乙案は訴訟代理人に対してのみオンライン申立を義務化し、また、丙案はオンライン申立を義務化せずに書面又はオンラインによる申立を選択できるメリットがある。

中間試案では、これらの案に加えて、「ITの浸透度、本人サポートの充実度、裁判所のシステムの利用環境等の事情を考慮して、国民の司法アクセスが後退しないことを条件として甲案の実現を目指すこととし、まずは丙案の内容を実質的に実現した上で、その後段階的に甲案を実現する。」という考え方も示された。

地方裁判所における13万1千件の民事事件(令和2年既済事件)のうち、双方に弁護士が選任されたものは6万1千件とされ、残り7万件(全体の53%)において弁護士を選任しない利用者本人による裁判が行われている(※)。

甲案は、IT機器を保有していない又は使い方が分からないという事情がある者が弁護士等を選任せずに自力で裁判に臨むことを躊躇させることが懸念され、国民の誰もがIT化の恩恵を受けられるわけではないこと、特に取り残される高齢者や障がい者等の司法アクセスを後退させることがないように配慮する必要から、当会としては、乙案ないしは段階的に甲案を目指すとの第4の案を支持したい。

民事裁判手続のIT化による司法アクセスの向上と裁判手続の利便性の向上を目指して、段階的に甲案が実現するまでには、当会においても、広く国民がIT化の利便性を享受できるよう、司法書士によるサポート態勢の整備を急ぎ、裁判を受ける国民の権利が実質的に保障されるよう、全力をあげて取り組む所存である。

 

令和3年3月12日

埼玉司法書士会 会長 柴 由之

 

http://www.moj.go.jp/shingi1/minji07_00178.html

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