埼玉司法書士会

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■2020年4月1日に施行される民法(債権関係)改正法についてvol.3

1 解除の基本的性質
契約の解除とは、契約を取り交わした両者の間に何らかの不都合が生じて、その事情によれば、この契約をそのまま継続することが両当事者の利益にならないと法律が判断した場合に、その契約関係を解消する効果を与えるものです。
しかし、原則的には、契約の一方当事者の意思のみでは、契約をやめたい、契約の拘束力から解放されたいという希望は実現しません。いったん締結された契約は、継続していくことを使命とされているのです。

2 契約当事者の状況
 契約当事者が解除したいと考える代表的な場面は、契約の相手方の約束違反です。民法では、これを「債務者の債務不履行」といいますが、ここでの「債務者」とは契約当事者の一方の呼称で、契約当事者として、その相手方である債権者に対してある債務をなす義務を負担している者という意味です。
具体的には、貴社が売買契約をして他社の製品を買うという場合は、「製品を渡す」という債務を負担する債務者はその相手方社であり、貴社は「製品を受け取る」という債権を有する債権者ということになりますが、その反面、相手方社は「代金を受け取る」という債権を有する債権者であり、貴社は「代金を支払う」という債務を負担する債務者という状況ですので、実は、双方それぞれが債権者であり債務者でもあるという関係が成立するのが、通常の契約のありようでしょう。

3 債務不履行による契約解除
さて、このような場面で、貴社が先に代金を支払ったにも関わらず、相手方社がいつまでたってもその製品を納入してくれないとき、どうしましょう。
まず浮かぶのは「代金を返せ」という要求ですが、そこにたどり着くには「契約解除」をしてからということになります。
なぜなら、貴社は売買契約に基づいて「代金支払い債務」を履行したのですから、売買契約が継続したままでは、貴社は、相手方社との契約に拘束されていて、相手方社が製品を引き渡してくれていないまま支払ったお金でも、売買代金として相手方社の手元に残り続けるのです。ですから、いきなり「代金を返せ」とはいえません。
そこで「契約解除」の発想が必要になるのです。まず、貴社が、相手方社に「催告」(いついつまでに製品を納入せよ。さもないと解除すると告げる)して、それでも期間内に履行されない場合に、相手方社に対して契約解除をするのです。そうなると、最初から「契約がなかったこと」になります。これが解除の効果です。そこで、相手方社の手元に残っているお金は、今度は「返さなければならないお金」に変わりますので「返してくれ」と言えることになるのです。

4 債務不履行の要件の改正
もちろんこれまでも、債務不履行による解除は当然にできていました。ところが、そこにはある要件がついていたのでした。それは、その債務を履行しないことについて、債務者になんらかの落ち度、すなわち「帰責事由」といいますが、それが必要であるとされていたのでした。つまり、あるもっともな理由があって債務を履行できていないような場合は、債権者から解除することができないのでした。
これを今回は改正して、債務者の帰責事由をいらないこととしたのです。法の考え方が変わって、債務者が悪いとか悪くないとかに関係なく、履行すべき債務が履行されていないのであれば、それを原因に解除して、相手方債権者を契約の拘束力から解放してやろうと考えたのです。

埼玉司法書士会 伊藤  亥一郎

 

※越谷商工会議所会報「鼓動」令和元年11月1日から転載

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