埼玉司法書士会

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■親の世話を兄弟交代でしてもらいたい

父を先に亡くした母が倒れて、ほぼ寝たきりの状態になってしまいました。私には姉と弟がいますが、どちらも自分の家庭を優先し、母の世話をしようと言ってくれません。交代で世話をしてもらうことはできないでしょうか。また、せめて世話をするための費用の一部を負担してもらえないでしょうか。

ご質問の趣旨ですが、お姉さんや弟さんとの関係がこじれておらず、話合いをされるのはこれからという前提でお答えします。

 法律上、自力で生活を維持できない者に対して、一定の親族関係にある者が支援を行うことを「扶養」といい、金銭扶養や引取扶養などの方法があります。民法では、親と子、祖父母と孫などの直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養をする義務が当然にあるとされています(例外として、特別の事情があるときは、家庭裁判所は三親等内の親族間にまで広げて扶養義務を定めることができます。)。生活保護の申請をしたときに親族に照会がされるのも、この扶養義務があるからです。扶養の程度や方法については当事者間の協議で決めることができるのが一番ですが、協議がまとまらないときや協議をすることができないときは、家庭裁判所に調停(審判)を申し立てれば、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力といった一切の事情を考慮して決めてもらうことができます。また、扶養義務者が数人いる場合、実際に扶養をする順序についても当事者間の協議で決まるのが一番よいのですが、協議がまとまらないときや協議をすることができないときには、やはり家庭裁判所に調停(審判)の申立てをして応分に決めてもらうことができます。このとき、過去に自分の分担額を超えて支出した扶養料があれば、他の扶養義務者に清算してもらえる可能性もあります。

ところで、親族間の扶養は、未成熟の子に対する親権者の監護や夫婦間の扶助と違い、自己の社会的地位や収入等に相応の生活をしたうえで余力を生じた限度で分担すれば足りるとされています。子の親に対する扶養についても、他の扶養義務者に余裕が本当にないのであれば、強制することは事実上できないのが現実です。

ご質問のケースですが、まずはお姉さんや弟さんと以上を踏まえてよく話合いをされたうえで、場合によってはやむを得ず家庭裁判所に持ち込むことや、ご質問者だけで世話をされるのが限界であれば介護保険などの公的サービスの利用も検討されてはいかがでしょうか。

司法書士は、裁判所に提出する書類の作成をしております。

詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 武井光崇)

※埼玉新聞平成29年8月4日から転載

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