埼玉司法書士会

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■葬儀代は誰が負担?

母が亡くなり、葬儀代として140万円かかりました。喪主は、長男の私が務めたのですが、葬儀代は、母が遺した唯一の預金口座から引き出して支払いました。

その後、母の相続について、弟と協議した際(相続人は私と弟の2人)、弟から「兄貴が勝手に使ったお袋の140万円はお袋の財産だから全額戻せ」と言われました。払い戻すだけの預貯金は、私にはありません。葬儀代は私が負担すべきものなのですか?

結論から言うと、一般的に、葬儀費用は、喪主(祭祀主催者)が負担することになります。意外に思われるかもしれませんが、葬儀の費用(死者の追悼儀式に要する費用及び埋葬等の行為に要する費用)を誰がどのように負担するかについては、民法その他の法律において特に定められているわけではなく、個別に、判例や慣習、相続人当事者の意向等を考慮しながら、誰が負担するのが適当かを判断することになります。本件の場合、お母様が予め自らの葬儀に関する契約を締結しておらず、相続人等関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合ですので、追悼儀式に係る費用(葬儀)は、自己の責任と計算において同儀式を準備し、手配等して挙行した喪主が負担し、埋葬等の費用については祭祀承継者(いわゆる「墓守」)が負担する、という「喪主負担説」が採用されることになると思われます。葬儀には、出費もありますが、反面、香典料等収入もあるため、喪主の判断(計算)で適当と思われる内容の式を挙げるものであり、お母様のご意向によるものでない場合には、お母様が負担する理由は無い、ということになるのかもしれませんね。

もっとも、弟さんとの間で葬儀費用の負担について合意がある場合は別です。既に使ってしまった葬儀費用について、誰が負担するか等を巡って兄弟で揉めるのもいかがかと思いますので、弟さんともう一度、ご自身に払い戻す資力が無いことも含めて話し合ってみてはどうでしょうか。兄弟各自の法定相続分(各2分の1)に応じて葬儀費用を負担することにし、精算するのが、現実的にみて適当な合意内容かもしれませんね。

詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 達脇清将)

※埼玉新聞平成28年2月4日から転載

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