埼玉司法書士会

司法書士は、くらしに役立つ法律家です。

■相続制度改正 配偶者居住権とは

私の家族構成は、私(長男)と妹一人と父と母です。父名義の財産は、家と宅地そして預金が2000万円ほどです。来年くらいから相続についての法律が変わると聞いたのですが、具体的にどう変わるのか教えてください。

あなたの場合で説明します。仮に、父名義の家と宅地の価格を2000万円と評価してみます。この場合、将来父が亡くなった時の遺産の合計は、4000万円となります。改正前の法律通りの割合で遺産を分ける場合、家と宅地をあなたの母が相続すると、預金の半分ずつをあなたと妹で分けることになります。

そうすると、母にはすぐに使える現金がないことになってしまいます。これでは、母には都合が悪いので、法律が改正されることになりました。遺産分割の話し合いなどで、家と宅地の権利を居住権と所有権に分けて考えます。母は居住権をもらい、家と宅地の名義はあなたが取得するとします。母は、居住権1000万円のほかに、預金から1000万円を相続できることになります。そして、あなたは、所有権1000万円を取得し、妹は残りの預金1000万円を取得することになります。こうすることで、母は当面今まで通り家に住み、現金も確保できます。

母が死亡したら、この家と宅地をどうするかはあなた次第です。所有者なので、貸したり売ったりすることは自由です。母の死亡により、居住権は消滅し、元の2000万円の不動産となります。ただし、この制度は、強制ではありません。話し合いや遺産分割調停・審判で発生させるものです。

このほかに、預金の仮払いの制度が作られました。今までは、遺産分割の話し合いがまとまらないと預金の払い戻しができませんでした。今後は、すぐに必要な生活費や葬式代のために、家庭裁判所に申し立てたり、あるいはそれをせずに、限度を設けて、仮払いを受けられるようになります。

なお、この回答の遺産の評価金額については、説明上、わかりやすいように単純化したものですので、ご注意ください。詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 河合 浩)

 

※埼玉新聞 平成30年9月6日から転載

※相続法の改正のうち配偶者の居住権の保護に関する部分については、公布後2年以内(2020年7月まで)の施行が予定されています。施行前に発生した相続については相続開始時点の法律が適用されますのでご注意ください。

各種相談窓口
Copyright(C) 埼玉司法書士会 All Rights Reserved