埼玉司法書士会

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■成年後見制度について

母親が医師から認知症であると言われました。現在は私の自宅で同居しています。父も同居していますが、認知症ではありません。ただ、父も高齢のため、今後のさまざまな事が心配であり、将来父が亡くなった後、どのように対処したら良いか分かりません。今から成年後見人などの選任を検討すべきでしょうか?

まず、母親が認知症だと医師から言われたということですが、認知症になったからといって成年後見人等を選任しなければいけないということはありません。成年後見人等の選任の申し立ては、各地域の家庭裁判所に対して行いますが、一定の書類をそろえて申し立てをする必要があります。

ご相談のケースでは、現在認知症の母親と高齢の父親と同居されているとのことですが、今後認知症の母親と高齢者の父親で想定される主な事としましては、①老人ホームの入所、病院の入院②介護費用の増大、入所、入院費用の発生③母親、父親の死後の相続の問題等が考えられます。

①の老人ホームの入所や病院の入院手続きに関してはご親族の方が母親、父親の為に親族の立場で一定の事を行う事が可能と思われます。

②の介護費用や入院費用の問題ですが、その費用が高額となり場合によっては母親、父親ご自身の預貯金の定期預金などを解約し、その支払いに当てる事が考えられますが、金融機関が預金者であります母親、父親の定期預金等の解約についての意思を確認した際、認知症である母親がその理解が不十分で明確な意思を表示できない事が考えられます。その結果、母親の定期預金などの解約ができずに、その費用の負担をご親族がされるという事も想定されます。

③のケースですが、将来父親が亡くなった場合のケースを考えますと、現段階での推定相続人は認知症の母親と相談者を含めた子供となります。相続が開始されますと、相続人として亡くなった父親の財産などに関して、さまざまな協議が行われる際に、母親が認知症のため、十分な意思表示ができずに協議ができない場合が考えられます。その結果、預貯金や不動産の相続手続きが進まない状態となってしまいます。

以上のように②の定期預金の解約の問題や、③の相続の問題が発生した場合は、母親の成年後見人を選任することによって、その成年後見人が母親の法定代理人として、さまざまな契約や協議を行うことが可能となります。

成年後見人はご本人である母親のために存在するものと同時に、ご本人である母親を取り巻く問題に関して適切に対応する事により、結果的にご親族に対してもさまざまな影響を及ぼすこととなりますので、成年後見制度を利用するにあたってはご親族で十分な検討が必要となります。

詳しくは、お近くの司法書士事務所または埼玉司法書士会(☎048-863-7861)へお尋ねください。(司法書士 今井明)

 

※埼玉新聞平成30年3月1日から転載

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