埼玉司法書士会

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■店廃業時の敷金返還は可能か

埼玉県内でラーメン店を経営していた者です。日本一うまいラーメン店を目指し、20年間勤めていた会社を辞め、独立開業しました。ところが、開店後半年で慣れない店舗経営と長時間労働で体調を崩し、長期間に渡る加療・入院が見込まれ、ついには廃業するしかない状態に追い込まれました。借りていた店舗は居ぬきで、立地も良かったので残念です。退去する際は、不動産屋さんによると、敷金は原状回復義務費用に充当するとかいって、1円も返してもらえないとの事です。入院費用も嵩み、敷金である家賃(月々8万円)4ヵ月分は生活再建を目指す上でも必要です。どうしたらよいでしょうか。

相談者様のご心労お察しします。近年、敷金トラブルが多く発生しています。敷金は本来、原則として賃借人に返還されるべきものです。建物・設備等の自然の劣化や損耗(経年劣化)、賃借人の通常の使用による生ずる損耗(通常損耗)は賃料によってカバーされるべきとされており、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反に伴う通常の使用を超えたことによる損耗等がある場合に、敷金から充当できるのです。ラーメン店経営という事業者であられた相談者さまも一般のアパート等の賃借人同様に、退去後に敷金返還請求権を行使できるのです。が、相談者さまのように敷金が返還されない場合、賃貸借契約の内容を確認する必要があります。というのは、事業用の場合、当然その損耗の程度は、激しくなるものと予想されますので、油汚れ、作業に伴う傷、新たな造作物の設置等を考慮して当然に原状回復義務特約が交わされている事と思われます。また、居ぬきで借りられたとの事ですので、元からある設置物が賃借人に引き継がれたものか、賃貸人が店舗と一体化したものとして賃借人に賃貸したのかなど、設置物を収去すべきか否かの問題も発生します。まずはあらかじめ定められた契約内容、特に原状回復に関する特約の内容の確認を今一度してください。また、たとえ特約があったとしても原状回復の内容が不明確な場合は、その特約が有効になるとは限りませんし、使用期間が半年という短い期間であった事も考慮する必要があるかと思われます。今回のようなご相談については、できるなら司法書士等、法律の専門家にご相談なされるのをお薦め致します。

詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048-863-7861)へお尋ねください。(司法書士 滝本徹郎)

 

※埼玉新聞平成30年4月5日から転載

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