埼玉司法書士会

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■「法定相続情報証明」制度が始まりました

相続に関する新しい制度が始まり、相続手続きが楽になったと聞きました。どのような制度なのでしょうか。

 平成29年5月29日からスタートした「法定相続情報証明制度」のことですね。

 これまで、相続手続きにおいては、遺産の内容によって、不動産は法務局、預貯金は銀行等、株式は証券会社、自動車は陸運局、保険金は保険会社というように、何か所もの機関の窓口に、相続人を証明するための戸籍関係書類一式を提出する必要がありました。この戸籍関係書類一式は、亡くなった方の出生から死亡までのものと相続人全員の現在のものが必要で、相続人が兄弟姉妹の場合は、さらに亡くなった方の両親の出生から死亡までのものも必要となる等、場合によっては20通程度に及ぶこともあります。提出すると、確認が済めばコピーをとって原本を返却してくれる機関が多いのですが、返却されるまでには日数がかかりますので、1か所ずつ順次手続きを進めている間に戸籍関係書類の有効期限(各機関により異なります。)が切れてしまってもう一度全て取り直さなければならなくなることもあります。そのため、最初から何セットか用意して数か所の機関の窓口に同時に提出するといった工夫も必要となる等、手間や費用の面で相続人の負担になっていました。

 新制度では、戸籍関係書類一式を用意し、相続関係を一覧に表した図とともに法務局に提出して確認を受ければ、亡くなった方と相続人全員の氏名や生年月日、続柄等の情報が載った証明書の交付を無料で受けることができます。必要があれば複数通の発行を受けることもできますので、その証明書を手続きが必要な各機関に提出し、各機関で認められれば、戸籍関係書類一式を提出しなくても相続手続きをすることができます。どの機関で証明書の利用が認められるかは、各機関での今後の検討が待たれるところですが、官民いずれの手続きにも使えるようになることが期待されます。

 相続手続きを行わないまま時間がたつと、相続関係が複雑化してしまい、いざ手続きを行おうとしたときに困難を伴うことになります。相続登記が行われないままの不動産は、所有者不明土地となり、公共事業を行う際の妨げになったり、空き家となって防犯、防災上の様々な問題も引き起こします。

相続手続きがまだお済みでない方は、新制度のスタートを機に検討してみてはいかがでしょうか。

 詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 大貫結子)

※埼玉新聞平成29年6月1日から転載

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