埼玉司法書士会

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■空き家の所有者が不明で困っています。

 私は約20年前に、私が所有する土地をある方に貸し、借主はその土地上に自己所有の建物を所有していました。当初はきちんと地代を払ってくれていましたが、15年位前からいなくなってしまい、現在は空き家状態で放置されています。同時に地代も全く払われなくなってしまいました。建物の所有者を方々探しましたが手掛かりが掴めず、大変困っています。

 あなたの場合は、当初あなたを賃貸人とした借地契約が締結されたものと思われます。 

 令和5年4月、所有者が不明な土地や建物を目的として、それらの管理に特化した新たな財産制度に関する法律が施行されました(民法第264条の2~第264条の8)。 

 この法律によると、所有者が不明である土地や建物について、裁判所が管理を命ずる処分をして管理人を選任し、管理人には、これらの土地や建物を管理し、処分をすることができる権限が与えられます。管理人は、裁判所の許可を得ることによって、これらを売却することもできます。 

 裁判所がこの管理を命ずるためには様々な要件(条件)が必要とされますが、主な要件としては、①所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないこと、②必要があると認められること、③利害関係がある者による請求(申立)があること、などがあります。 

 この新制度(所有者不明土地または建物の管理制度)ができたことによって、所有者が不明となってしまった土地や建物については、これまでの諸制度に加えて、より効率的で合理的な解決方法の道が広がった側面があります。 

 新制度を利用するに当たっては、上記①~③をはじめとした諸要件の綿密な検討、事前に裁判所へ納めるお金(予納金といいます)の準備、各種提出書類の収集と作成、申立書の作成などの専門的な知見が必要になってまいります。 

 あなたのケースにおいて、もしこの新制度の利用が可能であって、かつ、その利用が最も適切である場合には、非常に有益な解決方法の一つになり得ることでしょう。 

 詳しくは、お近くの「暮らしの身近な法律家」の司法書士、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)にお尋ねください。また、埼玉司法書士会では毎月第1・3金曜日の18時~20時に電話による「空き家トラブル110番」(☎048-838-1889)を実施していますので、是非ご利用ください。

(司法書士 五十嵐 正敏)

埼玉新聞 令和7年6月12日から転載

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