埼玉司法書士会

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会長声明

■貸金業法等の改悪に反対する会長声明

掲載日:2014.06.30

埼玉司法書士会
会長 知久公子

複数の報道によると、自由民主党は、財務金融部会の下に小委員会を立ち上げ、政府から認可を受けた健全な貸金業者に限り、上限金利を現在の20%から29.2%に引き上げることや、総量規制(いわゆる「収入の3分の1ルール」)を撤廃することなどの規制を緩和する法改正に向けた議論を開始したとのことである。この動きは、平成18年の改正貸金業法によって鎮火しかけた多重債務問題に油を注ぐもので、これまで解決のために懸命に努力してきた司法書士や弁護士などの取組を無にするものであって、当会としてはこれに断固として反対するものである。

現行の貸金業法は、平成18年12月、グレーゾーン金利を廃止し、総量規制を導入するなどにより貸金業の適正化を図るため、破産や自殺の急増などで深刻な社会問題となった多重債務問題を解決するための活動に取り組んだ法律家団体、消費者団体、労働者団体、被害者団体等の運動が国を動かし、与野党全会一致で成立し、第1次から第5次までの段階的施行を経て平成22年6月18日に完全施行された画期的な法律である。

この法律による高金利規制・総量規制、安心・安全なセーフティネット貸付けの提供、ヤミ金融の取締強化など、官民を挙げた「多重債務問題改善プログラム」の取組みなどが複合的に奏功し、多重債務問題は、確実に改善されてきた。具体的には、年間の自己破産申立件数や5件以上の借入れをしている人の数は、平成18年以降、大幅に減少し、負債を原因として自死に追い込まれる人の数も同年以降、減少の一途をたどっている。巷間言われた「消費者金融から貸付を受けられなくなり、ヤミ金融からの借入れが増大する。」という事態は、ヤミ金融被害の相談件数が年々減少し続けていることをみても生じていない。

このような中で、上限金利規制を緩和し、総量規制を撤廃すると、自己破産者、多重債務者、自死に追い込まれる者の増加などの多重債務問題を再燃させることは火を見るよりも明らかである。そもそも、健全な貸金業者であれば、債務者の生活や事業を破綻に追い込むような過剰融資や高金利での貸付を自粛すべきであり、法がこれにグレーゾーン金利を認め、多重債務者を産み出す過剰融資を許すことは、本末転倒であると言わざるをえない。

資金繰りが悪化している中小零細業者の資金需要に応えるためにこれらの規制緩和を容認すべきとの意見もあるが、事業破綻を招かないセーフティネット貸付けの拡充を図ることなどで対処すべきであり、中小零細事業者に対し、高金利で貸し付けても根本的な解決には繋がらないことは明らかである。

また、消費者金融などから借り入れなければ生活が成り立たない生活困窮者層の救済を根拠に、総量規制の撤廃を主張する意見もあるが、公的融資制度の拡充や捕捉率(生活保護を利用できる人のうち、現に利用している人の割合)が2割程度と言われる生活保護の改善など、社会保障制度により対応すべきである。総量規制を撤廃すれば、解決に向かった多重債務問題を再び深刻化させるだけである。

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